









「新しいのに替えてきましょうか?」
見るからに若者のスーパーのレジの女の子が、4個入りヨーグルトのフィルムラッピングがほんの少しだけ破れていることに気が付いて言うんです。
僕はそういうの全然気にならないので「あ、そのままでいいです」と答えました。
「らっしゃっいせー」って感じで、抑揚のない口調でただただレジ仕事をこなす定員さんも多い中、「この子出来る子!」僕はそう思い胸がキュンとしました(笑)
僕は、高校1年生の夏休みにはじめてのアルバイトを経験しました。
勤め先は八百屋さん。当時時給500円だったと思います。(これは当時の最低賃金ですね(笑)
始めた頃、ドキドキしながらレジをやったり、袋にイモを分けたり、店先にみかんやバナナを並べたりと、人様のお役にたてるようにと、我ながら健気に一生懸命やっていたと思います。
朝から夕方まで8時間働いて、終ったあとはご飯も喉を通らないぐらいでグッタリ。
人生ではじめて味わう疲労感だったと思います。
これは少し慣れた頃の話。
『にーちゃん、おいしいスイカ選んでくれ』とお客さんから頼まれることに。
ギクッ。とうとうこの日が来てしまったか!と内心思いつつも「いいですよ!」と動じない風で答えてみる。
やり方はすでに店長さんから教わっている。ポンポンとスイカを叩いてみて響く音が高いものを選ぶ、というもの。
「ポンポン」胸の鼓動がバクバクでどうかなりそうだけど、慣れた様子風でスイカを手で叩いてみせる。
「ポンポン」このとき、あるいは手が震えていたかもしれない。
いくつか叩いてみるうちに発見。これが一番音が高い!
「これがいいと思います!」ドキドキしながら言いきってみる。
『おー、そうか。ほなそれ貰うわ』
「ありがとございます」
少しホッとしてレジの所までスイカを。
レジ打ち作業のためスイカを台に置いてからレジをガチャガチャ…と。
「あっ」
スイカ、ゴロゴロゴロゴロ…。
まるでボーリングの様にスイカが奥へ転がっていく。
台にちょっとだけ傾斜があったのね…「グシャ!!!」
やってしまいました。落ちたスイカは見事に割れている。
『チッ。なんやお前、それが一番ええのんちゃーうんかいなっ!』
お客のオヤジにチクリとやられる。
「すみません…」
その後は、別のものを店長さんが選んでくれてお客さんは帰っていきました。
「木村君、気付けやぁ」と店長。
「はい。すみません…」
結構ショックを隠しきれない感じの高1男子。きっと見るからにシュ―ン。
「ま、ちょうどええわ。食べてみ。自分で選んだスイカ」
そう言ってスイカを手渡してくれる笑顔の店長さん。
味はよく覚えてないけれど。店長さん、パートの人、その時周りにいた大人が優しく笑っていたのを今でもはっきり覚えている。

12月29日~1月4日までお正月休みとなりますので、ご了承くださいませ。
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